海外での日本語教育が、“うまくいかない理由”は、国でも性格でも子どもでもなかった
海外赴任と海外永住の違い、子どもが日本語を使いたがらない理由、「教えたい」気持ちを“伝える”ために必要なこと、などを徹底解説!
1. 海外赴任と海外永住、表面は似ていても“中身”がまるで違う
「海外で子育てをしている」とひとくくりに言っても、実は大きく異なる背景があります。
たとえば、海外赴任組──数年後には日本に帰る予定の家庭では、親の方が現地の言葉や文化になじめず、子どもが先に適応していく。
すると、親だけが焦りと疎外感を抱えながら、「せめて日本語だけは」と必死になる。
一方、海外永住組──この地が子どもの“人生そのもの”になる家庭では、英語優位な環境の中で、
「なんで日本語をわざわざ学ばなきゃいけないの?」と疑問を持つ子が自然に出てきます。
親は「日本の文化や言葉も大切にしてほしい」と願うけれど、
子どもにとってそれは「もう必要ない、現実とズレた価値観」に映ることもある。
どちらにも共通しているのは、
親は「正しさ」から行動し、子どもは「気持ち」から動くというすれ違いです。
2. 「どうしてこの子は話さないの?」の問いに、答えは出ない
「せっかく時間をとって日本語を教えてるのに、全然覚えてくれない」
「この前は楽しそうだったのに、今日は無視された…」
「“日本語で答えて”って言っても、わざと英語で返してくる」
その裏にあるのは、「やる気のなさ」ではありません。
子どもが言葉を使わない理由は、「必要性を感じていない」か、
あるいは「それを使うことで自分の正体が見えなくなるのが怖い」かのどちらかです。
私が以前関わった永住組の小学生の女の子は、
「日本語で話すと“こっちの人じゃない”って思われる気がするからイヤ」
と言いました。
その子にとって、日本語は“親の価値観の象徴”であり、
自分が日々なじんでいく現地の世界とは、相反するものだったのです。
3. 子どもが“言葉”を拒むとき、それは“関係”を拒んでいるのかもしれない
私たち大人は、子どもが言葉を学ぶこと=“知識”の積み上げだと思いがちです。
でも子どもにとって言葉とは、
「誰とつながっていたいか」を決める、感情の選択でもあります。
「もう日本語いらない」
そう言った子は、本当に日本語を必要としないのでしょうか?
それとも、
「わかってくれない親と、それ以上深く関わりたくない」
「怒られたくない」「できない自分を見られたくない」
そんな想いから、言葉を“切っている”のかもしれません。
もし親が、自分の焦りや不安から子どもを“正しい方向”に導こうとしているなら──
その言葉は、子どもにとって「愛」ではなく「プレッシャー」に聞こえているかもしれないのです。
4. 「教えたい」気持ちが、“伝わる”ために必要なこと
あなたの思いや努力が、報われていないように感じることがあるなら、
それは、あなたが“間違っている”のではありません。
ただ、「伝え方」や「導入の設計」が、
子どもに合っていないまま進めてしまっているだけなのです。
導入とは、「今日から勉強するよ」と宣言することではありません。
“やりたくなる空気をつくること”、“気づけば学んでいた”と感じさせること。
それが本当の意味での“導入”です。
次の投稿では、
子どもが「またやりたい!」「もっと知りたい!」と言い出すようになる、
“日本語スイッチ”の入れ方をお伝えしていきます。